八ヶ岳・大同心南稜(敗退)

2008年11月30日


大同心はすっかり雪をまとっていた


 6時50分、美濃戸の駐車場を出発。 辺りには、昨晩降ったと思われる雪がうっすらと積もっている。 北沢の林道から登山道へと入る。 かつて雪山をやりはじめた頃は毎週にように入っていた八ヶ岳であるが、この道は久しぶりである。 2時間弱で赤岳鉱泉に到着。アイスキャンディーなるものを初めてみる。 すでに立派な氷がついており、登れそうだ。ここでハーネス等を着け身支度。

 9時頃、赤岳鉱泉を出発。登山道をちょっと行ったところが大同心への入口である。 大同心稜に入る。トレースがついている。既に何パーティか入っているようだ。 ラッセルはなくても傾斜があるので、息が上がる。樹林が切れるところでは風が強い。 上はどんな状況なのであろうか。不安と期待が入り混じる。 傾斜がきつくなってきたところでアイゼンを付けることにする。

 準備していると、上から外国人2人パーティが下りてきた。 しばし話をする。彼らは、裏同心ルンゼをやって下りてきたところで、 これから大同心ルンゼをやるとのこと。元気がいいことだ。なんといってもガタイが違う。 いつも思うが西洋人は食べてるものが違うせいなのであろうか。スタミナ・パワーともにダンチだ。 上の状況を聞いてみる。3人組みのパーティが雲稜ルートに丁度取り付いたところで、 他のパーティの姿は見えなかったとのことである。風も強いようである。 兎に角、我々も先を目指す。

 しばらく登ると目の前に大同心が姿を現す。といってもガスが立ち込め、下部の一部分しか見えない。 姿は見えないが、雲稜ルートの方からは確かに人の声が聞こえる。 我々は南稜なので、反対側へバンド伝いに回り込む。取付点と思われるところにザックがあった。 準備していると、上から人が懸垂で下りてきた。ザックの持ち主のようだ。単独のようである。 話を聞いてみると、登ってみたが、雪でルートがよく分からないので下りてきたようで、 どうやら諦めて下りるようだ。

 さて、どうするか。とりあえず少し登ってみようということで、まずは私が試登する。 出だしは傾斜があるが、ホールド・スタンスともに豊富なので難しくはない。 雪を払いのけながら、凍っているところにはアックスを打ち込みながら登る。 強風で雪が舞い、体にたたきつけられる。顔が痛い。ヒャ〜、キビシ〜。 15mぐらい上がったところで、ようやく残置のハーケンで支点がとれた。 途中にもあったかもしれないが、雪が付いていてよく分からなかった。

 ここからはどこを登るか。ガスっていて十数mくらい先しか見えない。 ここまで雪が付いてしまうと、ハーケン等のビレイポイントの確認は思うようにはいかないであろう。 二人ともこのルートは初見である。一見どこでも登れそうなところだけにルート判断は難しい。 突っ込んでもし行き詰まったら、この雪と風の中ではシビアな状況になるのは間違いない。 それにまだシーズンの最初で体が慣れていない。 今日のような状況ではあまりリスクをとるべきではない。 私の中では撤退を考えていた。ひとまずピッチを切り、K氏に上がってきてもらう。 上がってきたところで撤退の考えを伝える。残念そうであったが、撤退に異を唱えなかった。 少し回りこんだところまで登ってみると、岩にシュリンゲがかかっているところがあったので、 それにロープをかけ、ルンゼ側から下りた。

 バンドに沿って大同心稜に戻る。雪があると下りははやい。 時間に余裕ができたので、辺りを散策して15時過ぎに下山した。


感想

 シーズンの最初から雪山の洗礼を受けたような感じであった。 天候に合わせて日程を組んでいるわけではないので、雪山ではある程度の敗退は覚悟している。 その撤退もギリギリのところでしているつもりである。 しかし、そこには何か目に見えない壁のようなものがあって、 それに行く手を阻まれ、追い返されているような気がしてならない。 越えたくても超えられない壁。 これが自分の実力、限界と半ば諦めている自分といつかは越えてやると闘志を燃やす自分。 どちらの自分が勝つのかは分からない。 いずれにせよ、大同心へはまたいつか挑戦することになるであろう。

(記 UK)


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