北アルプス・チンネ左稜線(早月尾根~剱岳~チンネ左稜線)

お上は梅雨が明けたというものの、庶民にはどうもまだ実感が湧かない7月末。GW前から誘われていたけども、私のヘルニアのリハビリで延び延びになっていたチンネ左稜線にU島、他1(M井さん)行ってきました。

日時:2022年7月29日(金)~2022年8月1日(月)
エリア:北アルプス
ルート:馬場島~早月尾根~剱岳~三ノ窓~チンネ左稜線
メンバー:U島、他1(M井)

7/29(金)の午後に厚木を出発、圏央、中央、上信越と乗り継ぎ、19時頃に北陸道の有明海SAに到着。昼間の熱が落ちきらない暑い車内で仮眠。2時に起きて、コンビニ朝ご飯を経て4時頃に馬場島着。馬場島の駐車場は4時の時点で満車。すこし上の空き地に駐車し、準備。背中のザックがクソ重い。早月小屋までは水場がないので行動用の水も含めフル歩荷。

早月尾根のスタート、登ると決めたことを後悔するような急登から始まり、いきなり汗だくになる。その後も結構な急登が続く。台風で崩壊したのか登山道も結構悪い。4月のヘルニアの手術後、重荷を背負っての山行から遠のいていた私、重荷耐性がガタ落ち。会の他のメンバーを見習って歩荷トレに励もうと心に誓った。

早月小屋に着いて、午後の天気が悪化しそうな雰囲気でこの重荷を背負っての北方稜線の通過は危険だろうということで三ノ窓まで行くのを中止し、早月小屋をBCにすることに。早月小屋は早月尾根に唯一ある山小屋で稜線にあり、雪渓もなく水は有料。2リットルで1300円です。

翌日、0:30に出発することにして早々にテント設営し、昼寝。そうこうしていると13時頃からとんでもない大雨・・。これは行かなくて正解だった。翌日は長丁場が予想されることもあり、登攀に必要なロープやガチャ類、食糧、ビバークキットだけサブザックに準備して18時にシュラフに潜り込んだ。

0時に起きる。外は満天の星空。行動食を適当に口に入れて、0:30時頃早月小屋を出発。劔のピークまで3:30。ヘッデンでこれまた歩きにくい道をピークを目指してひたすら登る。ピーク直下の岩場あたりで空が白んでくる。劔のピークにはご来光狙いの登山者が数人。チンネ狙いの我々はあー、富士山見えるねーと言葉を交わすくらいで小休止の後、北方稜線へ入る。山頂にたたずむ登山者から、えっ、こんなところ下りるんですか?と怪訝な顔をされる。

北方稜線は長治郎のコルまでは稜線を歩き、そこから池ノ谷乗越までは右に左にと忙しい。一般道ではないにせよ、こんな所が登山道になっているのは理解しがたい。長治郎ノ頭を越え、池ノ谷乗越に下りる。ここから池ノ谷ガリーを下り、三ノ窓に至る。この下りが大変で、どれほど慎重に歩いても足下の岩屑が崩れ、それが小さい岩を落とし、大きい岩を巻き込んでガラガラと崩れる。わずかな踏み跡を辿り、最初は左、次に右と三ノ窓がある右側へとトラバースしていく。

長治郎のコルからみた熊の岩方面

三ノ窓まで来るとチンネの巨大が岩壁が見える。いやはやこれを登るのか、、とその前にまだたっぷり残ってる雪渓をトラバースしなくてはいけない。12本爪アイゼンをつけ、バイルを片手にトラバースする。

三ノ窓雪渓の水場は上下に分かれているちょうど中間あたりに出ていたが、汲みに行くのは結構大変。ベルクシュルントが大きく口を開けていて落ちたら一巻の終わり。

チンネ左稜線の取り付きは「4」を鏡に映したような箇所がスカイラインを左下の方にあり、三ノ窓からでもよく見えるので間違えることはない。しかしここもベルクシュルントがあり渡るのは無理。一段下がったテラス状の所は雪渓が繋がっておりここを渡った。

今回は全ピッチをツルベで登った。各ピッチとも支点は残置ハーケンのみ。恐らく昔はあったハーケンが抜けた/腐った等の理由でランナウトする箇所があるのでNP(カム・ナッツ類)は必須。

多分、2ピッチ目か3ピッチ目

チンネのピークにあるチンネの岩?この上に立つと素晴らしい高度感ですが、ガスってて面白くない・・。

各ピッチとも落ち着いて登れば難しくはない。ハーケンは潰れたり、埋もれすぎたりでカラビナのアゴが通らないものもあり、細いスリングやケブラーの細引きは数本持っていった方がいいと思った。

核心の「鼻」もカンテの左側に支点まで続くクラックがあり、そこをレイバック気味に登れば問題ない。ハーケンベタ打ちだし、カムも効くのだが、残置支点全てにランナーを取ると弾切れになるので注意が必要。

核心を抜けた後からピークまではとんでもない高度感の中でのクライミングとなるが、我々が登った時はガスっており楽しみ半減だった。いないと思うが、高所恐怖症のクライマーはセミになること必至(笑

登ってきたチンネ左稜線

13:30頃、トップアウト。天候悪化の気配があるので写真もそこそこに池ノ谷ガリーへの下降の準備。池ノ谷ガリーへは3回の懸垂下降が必要。なお、下降支点はルート途中も含め、お約束のADT(アメリカン・デス・トライアングル)。今回、時間短縮もあり我々はそれを使ったが、捨て縄を多めに持っていった方がいいと思う。

2回目の懸垂下降支点

池ノ谷ガリーへの下降は落石を起こさないように慎重に降りる。ロープを抜く際、スタックも怖いがそれ以上に落石を引き起こすのでくれぐれも慎重に。ガリーを登り返し、池ノ谷乗越に至る。ここから朝歩いた北方稜線を剱岳まで辿り、早月尾根を下る。

幕営している早月小屋に、チンネ登攀を終え、池ノ谷乗越に戻ったことと、これから北方稜線を辿りテン場まで戻る、遅くなるが問題無い旨、電話を入れる。なお、今回ほぼ全域でドコモは通じた。AUは圏外。

ガスで真っ白な北方稜線、途中でも雨も降ってきて最悪のコンディション。とはいえビバークするような状況ではないので殊更慎重に歩を進める。剱岳ピーク、17:00頃、このあたりから雨が本降りに。雨&ガスで視界不良。GPSでルートを確認しつつ、極悪な岩場を下る。

早月小屋のテント場についたのは20:30頃。ここまでの行動時間20時間。小屋番の方に遅くなってすみませんと謝ると、電話をもらったのと上で動くヘッデンが見えたので安心してましたとのこと。

今回のテントは軽量化のため、シングルウォール。雨には弱く中は多分池・・。無事降りてきたし、ちょっとは日和りますか、ということで濡れたテントを放棄し、小屋素泊まりに変更。乾燥室に荷物を放り込み、最低限の荷物整理だけして布団へ・・。

翌朝はピーカンの好天。朝食を済ませ9時前に早月小屋を出発した。下りの早月尾根も中々の悪路で汗だくになりながら下山。

馬場島着が12:30。M井さんとお疲れさまでしたと固い握手を交わす。その後、早月川沿いにある「みのわテニス村グリーンハウス」で風呂にありつく。日焼けした腕と首筋が痛いがそれ以上に充実感で一杯だった。

文:U島