雪童の春合宿であるが、参加者が3人と寂しい。
もともと、鹿島槍東尾根、白馬主稜なども候補であったが、
雪の状態が悪そうということで、燕から表銀座を経て東鎌尾根
から槍を目指すことになった。登ってみると思ったより手強く、3日目は予定を変更し
て水俣乗越から槍沢に下り、予備日を使って槍登頂を目指すことになった。
以下はGTの記録である。
5月2日(火) 新宿から「ムーンライト信州81号」に乗り込んだ。 4日前のときより新宿のホームは大勢の登山者で混んでいた。よく言えば活気があった。 5月3日(水) 中房温泉 6:00 〜 6:40 第一ベンチ(休) 〜 7:15 第二ベンチ 〜 9:15 合戦小屋 〜 10:45 燕山荘 (燕岳往復) 12:00 〜 13:00 大下り 〜 16:20 大天荘 穂高駅からは5人の乗り合いでタクシーを使った。 5人だとバスより少し安いという。 おかげで予定より早く中房温泉に着いた。 登山口は既に大勢の登山者でにぎわっていた。支度を整えて出発。 天気もよく第1ベンチ、第2ベンチ、合戦小屋から燕山荘へと快調に歩く。 合戦小屋はまだ雪の中だが臨時の売店が出ていた。 途中、合戦沢の頭の先 では、表銀座稜線上に槍の頭が見えた。 燕山荘からは、私だけが空身で燕岳に向ったが、重荷から解放された割にはペースが上がらず、 往復に50分ほどかかってしまった。 年末に来たときにはほとんど展望はなかったが、今日はすばらしい展望で、大天井、 槍、北鎌尾根、黒部湖、剣、立山などがよく見えた。 大天井に向かう。この道は苦しかった。アップダウンが多く、なかなか大天井の基部 に辿り着かない。蛙岩の岩場の下りはアイゼンでは注意が必要である。 ようやく大天井 の基部に着いたが、ここからは一気に頂上まで登ることになる。 しかも、途中には雪壁 や岩場があり、気が抜けない。 やっとの思いで頂上に着いたときにはかなり消耗してい た。 大天荘の冬季小屋には2人の先住民がいた。 この冬季小屋は3時間前に彼らが掘り出 したのだという。有難く使わせてもらった。 目の前には夕日に染まる穂高、 槍が見えるが寒いので中に入り夕食(ナントFKさん手製のカツ煮)とする。 中は真っ暗で寒いが、風が入らないのでよしとしよう。 テントは2張りあったが、風でかなり揺れていた。 5月4日(木) 大天荘 5:40 〜11:30 西岳 〜13:00 コル 〜16:10 テント場 今日もいい天気だ。大天井の頂上へ登り返し、そこからヒュッテのあるコルまで下る。 この下りも急で気が抜けない。コルからは硬い雪壁の登りでふくらはぎが疲労した。 振り返ると7人ほどのパーティーが頂上から降ってくるのが見えた。 彼らは北鎌尾根に向かったようだ。 豊富に雪が残る稜線を行くが、傾斜のきついアップダウンがあり消耗 する。 途中、赤岩岳の岩稜をロープを出して東側の雪壁をトラバース。西岳からの下り はかなり急な雪壁で、コルまでの長い距離ほとんどをクライムダウンした。 ここからが 今回のルートでの核心部であった。 ナイフリッジをスノーバーでランニングを取りなが らロープを伸ばし、セカンドはフィックスロープで通過という作業を繰り返す。 水俣乗 越の辺りの槍沢側の小尾根の先にテントを張れそうな場所があったので、時間 を考えて 行動を終了することにした。 一時間ほどかけてテラスを作り幕営。明日の行動を話し合い、 雪の状態がよくないので東鎌は断念するが、折角なので槍沢から槍頂上を目指すことにした。 5月5日(金) 6:10 テント場 〜 7:10 デポ場 〜 13:50 デポ場 〜 15:30 横尾 テントを撤収し、急な雪面を降る。槍沢の手前に穴を掘って荷物をデポし、槍に向かう。 念の為スコップを持った。槍沢では早朝ということもあり登りはいないが、大勢の 人が降っていた。昨日までと違い、まったく緊張感のない雪面をだらだらと登っていく。 槍の肩に着き、ザックを置いて空身で槍に登った。渋滞もなくあっさりと頂上に 着いた。とくに感激もないが、やはり頂上を踏むことで山行に区切がつく。 北鎌からの パーティーが最後の雪壁に取り付いているのが間近に見えた。 降りはシリセードをしな がら降りたが、雪が腐っていてうまく滑らない。 デポ品を回収して横尾に向う。 ずっと緩やかな下りであるが距離が長いので消耗する。時間的に徳沢まで行ってもよ かったが、横尾で幕営とした。テント場は多くのテントで溢れていた。 明日は、上高地 まで歩いてお風呂に入って帰るだけ、と思うとうれしくなった。 5月6日(土) 3:30 起床 5:00 〜 7:30 河童橋、新島々 10:05 〜 10:30 松本 テントを撤収し上高地に向かう。夏道を行くが、途中土砂崩れで道が埋っていた。下に 降りて巻き、再び夏道に復帰。徳沢、明神で休憩してついに河童橋に着いた。 沢山の観光客の間を縫ってアルペンホテルへ行き、4日間の汗を流す。極楽の一時である。 上高地からタクシーで新島々へ、電車を乗り継ぎ無事帰って参りました。ATさ ん、FKさ ん、4日間本当にお世話になりました。 << 感想 >> 計画書を見たとき、初日に大天井まで行けば 2日目は槍に登ってひょっとしたら横尾まで行けるのでは(?)と思った。 実行してみて、その読みが如何に無知故の ものであったかが思い知らされた。技術の面では、雪稜でのロープワークと通 過、リード、ビレイと私にはとてもよい経験となった。誰とも出会わなかった大天 井から水俣乗越までのルートと、登山者でうんざりするような槍沢とのコントラスト が印象的 だった。雪の東鎌尾根は今後の楽しい課題として大切にしたい。 |