北岳バットレス(bガリー大滝〜第四尾根〜中央稜)

2008年8月8日〜10日


第四尾根5ピッチ目(垂壁を越えてリッジへ)

 南アルプス林道のマイカー規制により、 以前のように朝暗い内に広河原を出て1日で下りてくるという計画が難しくなったので、 今回の計画は、ルートの途中で1ビバークする2日間の行程とした。 下部岩壁はこれまで登ったことがないbガリー大滝とした。 また、第四尾根を登攀するだけでは時間的に余裕があるので、 以前より行ってみたかった中央稜との継続登攀とした。

 そして、このルートを、アルパインに強い意欲を持ち、 成長著しいMNさんをパートナーに挑戦することにした。



8月8日
 21時に瀬谷を出発。16号は相変わらず混んでいたが、 その後は順調で、韮崎ICでおり、24時半頃、芦安の市営駐車場に到着。 すでに多くの車が止まっている。バス停に近い第3駐車場に止め、車の脇にテントを張り、就寝。 しかし、車の出入りはその後も絶えることはなく、また、 暗い内から起きて準備を始める人もあり、あまり眠れない夜であった。


8月9日
 5時10分発の朝1番のバスは見送り、次の40分発のバスに乗ることにしたので、ゆっくりと準備する。 バス停に行くと、バス料金にプラス100円で乗り合いタクシーがあるとのことであった。 バスよりも15分か20分ほど早く着くとのことだし、 乗り心地もバスよりもいいだろうからタクシーを利用することにする。 広河原まで、40分ほどかけて林道を走る。道中、間ノ岳などがよく見える。 青空が広がり、天気がいいのだが、予報によると夕方から雨とのことであった。

 6時45分、広河原を出発する。野呂川に架かる吊り橋を渡るところからは、北岳が丁度正面に見える。 目標としているバットレスも見え、心が躍るが、先はまだ長い。 橋を渡り、大樺沢沿いの登山道に入る。 このあたりは水流が近いので心なしか涼しく感じる。 一般の登山者が多いので、ペースはゆっくりである。 途中から沢の水がなくなったので、上で水がとれるか不安になったが、 下りてきた人に聞いてみると、上の方でも水場があるとのことなので、そのまま進むことにする。 やがて、視界が開け、二俣に到着。このあたりから上流にかけて大きな雪渓がある。 例年よりも多く残っているようである。 沢沿いのコースは一部まだ雪の下なので、部分的に巻き道のルートになり、やや歩きにくい。 たいぶ疲れがでてきたところで、ようやくバットレス沢に到着。 この沢には水がたっぷり流れていたので、ここで水を補給。食事用に1Lずつ持つことにする。

 bガリー大滝を登るのであれば、バットレス沢をつめればいいのだが、 前に歩いた記憶があるd沢から入ることにした。 沢沿いから草付の中の踏み跡を辿っていくと、十字クラックあたりにつく。 ここから基部に沿って、bガリーまでトラバースすれば問題ないと思っていたのだが、 これは失敗であった。cガリーまでは行けるが、bガリーまでは行けないことがわかった。 計画を変更して、cかdガリーを登ることも考えたが、 cガリーは、見たところ傾斜がきつく、支点もあまりない感じで難しそうだし、 dガリーは以前登ったことがあり、難しくはないのだが、 その上のピラミッドフェースを登っているパーティがあり、 落石の危険性が高いので、やめることにした。 そこで、cガリー大滝の下に広がる雪渓の下まで一旦下り、 斜面をトラバースしてbガリー側の尾根を再び登ることにした。 雪渓下のザレた急な斜面のトラバースは悪く、同行者のMNさんには本当に申し訳ないことであった。 ここで余計な体力と時間を使ってしまったが、なんとか無事bガリー大滝に到着。 パッと見、ルートが分かりにくいが、傾斜はそんなきつくなく、なんとかなりそうな感じだ。 さっそく登る準備に入る。さあ、これから登ろうかというときに雨がぱらつきだした。 どうするか。ガリー自体は濡れていても登る覚悟はあるものの、 その先を考えると・・・。と悩んでいると、雨は一旦やむ。まだ日差しもあるし、 本格的な雨ではなかったということで、予定通り登ることにする。


下部岩壁bガリー大滝

1P目:UKリード。
 最初ガリーに近いところにルートがあると思い、左寄りに行こうとするが、支点がない。 右側にハーケンがあったので、フェースをトラバース気味に右上し、1ピンとったところで直上する。 やや短いが、潅木があるところでピッチを切る。 3級程度であるが、やはり最初の1本目は緊張する。

2P目:MNリード。
 凹状からカンテ沿いに上がり、そこから草付混じりのフェースを直上。 このあたりも支点は少な目であるが、MNさんは臆することなく直上する。 ザイルいっぱいのばしたところでピッチを切る。

 この先は緩傾斜帯に入っていく感じであるが、ブッシュで先がよく見えないので、 UKがザイルをつけたまま偵察。傾斜がおちてきているし、 踏み跡もはっきりしているので、10mほど上がったところでザイルを外すことにする。 しばらく踏み跡を辿りながら直上。 そのまままっすぐ上に踏み跡が続いていたが、斜面をトラバースする踏み跡を見つける。 そろそろcガリー側に行かないといけないと思っていたので、そちらの踏み跡に入る。 この頃からまた雨が降り出してきた。今度はガスってきたし、いよいよ本格的な雨になりそうだ。 ビバークできそうなところを探しつつ、先を急ぐことにする。 薄い踏み跡を辿っていくと、cガリーに出る。 ここを横断すれば四尾根も近いはずだ。 このあたりから雨脚が強まる。ガリーを越え再び樹林帯に入ったところで、ちょっとした岩陰があった。 2人くらいなら、なんとか入れそうなスペースなので、そこに避難することにする。 雷も鳴り出し、雨脚がさらに強まる。おまけに雹まで落ちてくる。 風も出てきて、荒れた状況になった。 雨具だけでは濡れて寒くなりそうなので、ツェルトを出して頭からかぶり、 雨・風をしのぐ。岩にとりついているときでなくてよかったと思う反面、 まだ四尾根の取付きすら行っていない現実に気が重くなる。 雷によるものであれば、そんなに長くはないと思っていたが、なかなか雷はやまず、 2時間以上は続いていたように思う。時折雷がすぐ近くで鳴る。 岩陰は決して安全な場所とはいえないが、まだ樹林帯の中でもあることから、 嵐が過ぎるまでじっとしていることにする。 ようやく雨が上がる。水が流れてなかったcガリーも沢と化していた。 かなりの量の雨が降ったことが窺われる。

 とりあえず、四尾根の取付きまで行って、その後の行動を考えることにする。 実は四尾根の取付きは、すぐ近くであった。 当然のことながら岩はびっしょり濡れていて、とても登攀できる状況ではない。 時間は早いが、この日の登攀は諦めることにする。 取付き点は、やや傾斜があるもののツェルトを張るには十分なスペースがあるので、 今晩はここに泊まることに決める。雨で空気が冷やされ、寒いくらいだ。 濡れていたこともあったので暖をとりたかったが、私が軽量化のため、 小さいカートリッジしか持ってこなくて、それがどれくらいもつのか分からない。 ガス節約のため、熱いコーヒー1杯で我慢。一息つく。 夕飯は、軽量化と水の使用に制限があることから、アルファ米にFDのおかず。 そんなものでも、案外おいしく食べられるものだ。夕方になって、ようやく雲間に青空が出てくる。 明日はまた晴れそうだ。岩が乾いてくれれば、なんとかなるだろう。そう願い、 まだ明るいうちだが、やることもないので早々に寝ることにする。 MNさんはしっかり寝ていたようだが、繊細な私は昨晩、あまり寝てなかったので、 今晩はしっかり眠る予定であった。 しかし、この後、想像を絶する事件が待ち受けていたのであった。

 20時くらいであっただろうか。人の声がして、目が覚める。落石の音も聞こえる。 こんな時間に人が・・・。最初は空耳かと思ったが、どうやらそうではなさそうである。 気になるので、外に出てみる。cガリーを下降しているようだ。 ピラミッドフェースを登っていたパーティであろうか。5人ぐらいいた。まだ若い。 学生のようである。浮石が多く、 傾斜もあるcガリーをヘッドランプの明かりで下りるなどあまりにも危険だ。 少し話を聞いてみると、雨により登山靴での四尾根登攀を諦め、下山しているとのことであった。 ベースにしている白根御池小屋まで戻るらしい。 別に仲間がいるようで、無線で連絡をとり合っている。 cガリー大滝を下りようとしているが、どうも下降点が分からないらしい。 そこで、dガリー大滝につながる踏み跡を教えておいた。 なんか釈然としないが、これ以上かかわることもないと思い、ツェルトに戻る。 しばらくすると、また話し声が聞こえてくる。dガリー大滝の下降点が見つからなかったのか、 戻ってきたようだ。やはりcガリーを下りるという結論に至ったようだ。 余計なことを言ってしまったかもしれない。 しばらく話し声が聞こえていたが、最終的に彼らがどうしたかは分からない。

 事件はこれで終わったかに思えたが、実はまだ終わっていなかった。 もっとすごい事件が、このあと起きたのである。 真夜中の1時前後だったと思う。また人の話し声が聞こえてくるのだ。 まさか。ありえない。耳を疑ったが、現実らしい。声は上の方から聞こえてくる。 どうやら四尾根を懸垂下降しているようだ。 深夜に、岩場を懸垂下降するなど私の理解の範囲を超えている。 このパーティも先ほどのパーティの仲間のようだ。 四尾根の取付き点に我々のツェルトがあり下りられないとかいうような話も聞こえてくる。 申し訳ないと思う反面、そもそも深夜に下りてくるなど想定してないし、 今さらどうしようもないので無視することに。 彼らは、どうやらピラミッドフェース側に下りることにしたようである。 実際のところ、dガリー大滝を下降するのであれば、その方が早い。 おそらく4、5人はいるだろうか。 下降支点が分からないとかザイルが引っかかっておりてこない等いろんな声が飛び交っている。 また、寒さと空腹で相当疲れている感じが伝わってくる。 救いは、リーダーらしき人が冷静に指示を出し、仲間を励ましていることだ。 しかし、果たして、深夜に濡れた岩場で懸垂下降を繰り返すのが、本当に適切な判断なのであろうか。 推測するに、おそらくビバークするだけの装備や水、食料がないのだと思う。 寒さと空腹に耐え切れなかったのかもしれない。 そうだとしても、夜、暗い中浮石だらけの急なガリーを下るとか、 岩場を懸垂下降するという行為は、あまりにもリスクが高いような気がしてならない。 明るくなるまで、あと数時間。 待つことはできないのであろうか。 仮に私がその立場であったら、どういう判断を下したであろうか。 そのリスクはとるべきではないというのが私の見解である。 状況を聞きたかったが、真相は分からないままである。 翌朝、ヘリが飛んでないようなので大きな事故はなかったようだが、紙一重ではないだろうか。 おかげですっかり眠気がさめてしまった。 頭の中で気になってしかたがない。さらに寒さも加わり、ますます眠れなくなってしまった。


8月10日
 朝、4時前にセットしていたアラームが鳴る。まだ暗い。 夜、熟睡できなかったせいか眠い。明るくなってからでもいいかと思い、しばし横になっている。 やがて雲の間から太陽が顔を出してくる。とたんに気力が湧いてくる。 やはり人間には日の光が必要なのだと思う。急いで食事をすませ、準備にかかる。 やがて、下の方から声が聞こえてくる。朝一番で登ってきているパーティがあるようだ。 さすがに追いつかれる心配はなさそうである。天気もいい。岩もすっかり乾いている。 我々も登攀を開始することにする。

 最初の数メートルは、支点もないし、難しそうだし、巻き道がはっきりあるので、巻くことにする。 実質的な登攀は、この上のフェースから始まった。


第四尾根主稜

1P目:UKリード。
フェースからクラックへ。クラックは、傾斜はそんなでもないが、 細かいのでバランスをとるのがちょっと難しい。 前に来たときは、ここは登ってないかもしれない。 支点が少な目なのでカムを2箇所セットし、朝一番から落ちたくないので核心部はA0でクリア。 たぶん、技術的には今回のルートの中では一番難しい箇所だったと思う。 フォローのMNさんも荷があるせいか、ここでは苦労したようだ。

2P目:MNリード。
草付の濡れた岩場を回りこみ、リッジへ。

3P目:UKリード。
リッジからテラスへ。もしかして、ここが取付きテラス?

4P目:MNリード。
フェース。やや草付。

5P目:UKリード。
フェース。ここもやや草付だけど、快適。

6P目:MNリード。
フェース。このあたりが白い岩のクラックか。展望がいい。ピラミッドフェースの頭まで。

7P目:UKリード。
コルから三角形の垂壁を越える。 この垂壁は、数メートルしかないが、細かいスタンスを拾いながらの登攀が楽しめるところだ。 再びリッジ。このあたりは高度感があって楽しい。岩は硬く快適。マッチ箱まで。

 マッチ箱からは約10mの懸垂下降となる。 先を見ると、上部フランケから上がってきたと思われる集団が、枯れ木テラスの前後に十何人もいて、 渋滞している。急いでも下は混雑しているので、 あたりを眺め、のんびりしてから懸垂下降する。

8P目:UKリード。
リッジ上のクラックからフェース。出だしは、スラブ状でやや細かいが、クラックをつかえば問題なし。

9P目:MNリード。
凹角から枯れ木テラスまで。ここも快適なリッジ。

 中央稜に行くなら、この枯れ木テラスから懸垂下降することになる。どうするか。 一度下りたら四尾根には戻れない。登る前に雨が降ってきたら、登攀はできず、 cガリーを下るしかない。 それだけはしたくない。時間的には問題ないが、天候判断が難しい。MNさんに意見をきく。 ここまででも満足しているようだが、行ってもいいとの意見。相変わらず強気だ。 天気は、あと数時間はもつだろうと判断。 その間に核心のハングさえ越えてしまえば、あとはなんとかなるだろう。 行くことに決め、懸垂下降の準備に入る。ここの下降点は悪い。 支点はほとんどハーケン。中には効きの悪いものもある。 その上、あたりには浮石が多く、岩も脆い。 支点についてMNさんはかなり心配のようだが、いっぺんに全部抜けることはないだろうと思い、 その支点を使うことにする。この懸垂下降は、途中から空中懸垂になる。スリル満点である。 下り立ったところは、目に見えるものはすべて浮石というぐらい不安定な場所である。 cガリーへはここからもう1P下降する必要があるが、これがまた怖い。 ちょっと足を動かしたり、ザイルが触れたりしただけでも落石が生じる。 散々落石をおこしながら、なんとかcガリーに下り立つ。 ザイル回収の際、落石を避けるためザイルを斜め方向でおろそうとするが、動かない。 やむをえず、少し上がって、角度を変えながら引くとなんとか動いてくれた。 落石に注意しながらザイルを回収。これだけでも結構疲れる作業であった。

 cガリーは、これまでの日の当たる四尾根とはうって変わって暗く陰鬱なところだ。 とりあえず中央稜の取付きまで移動。少し休憩してから登攀開始と思っていたが、 あたりがガスってきて、なにやら雨の予感。 先を急ぐため、休憩はとらず、すぐに登ることにする。


中央稜ノーマルルート

1P目:UKリード。
全体的にやや岩が脆い。支点も少な目なので、慎重に登る。 途中からハング下をトラバースすることになる。 頭がつかえるので、どうしても体勢が不安定になる。 急いでいるので、ここはA0でちょっと強引にトラバース。 支点の効きが悪いので、冷や冷やものである。今回の中では一番気持ちの悪いピッチであった。 トラバースを終え、少し上がったところでザイルの流れを考え、ピッチを切る。

2P目:MNリード。
ルンゼ状を直上。傾斜はあるが、ホールド・スタンスともにしっかりしている。 ここでMNさんは、次のピッチも考慮してくれて、 ハング下までうまくトラバースしてピッチを切ってくれる。

3P目:UKリード。
数歩上がるとハングがある。そのハングのくびれた部分を越えることになる。 ホールドはしっかりあるのだが、スタンスがやや細かい。 思い切ってフリーでいきたいところであったが、すでに腕はかなり疲れていた。 ここは無難にシュリンゲに足をかけて越えることに。フリーでいきたかったが残念。 次回の課題になってしまった。ここを越えれば、再びリッジへ。徐々に傾斜もおちてくる。 もう怖いところはない。雨も降り出す気配もない。視界が開け、快適なリッジである。 振り返れば、四尾根が下に見える。数パーティが登攀している。 きっとこちらがよく見えていることだろう。

4P目:MNリード。
これが今回の最終ピッチである。リッジから凹角へ。ザイルいっぱいのばしたところで終了。

 この先は踏み跡が続いており、ザイルは必要なさそうだが、念のため、コンテで行くことにする。 一面お花畑の中の踏み跡を辿っていくと、10分ちょっとで山頂に到着。 かくして、懸垂下降3回を含め、 下部岩壁から18ピッチの長い登攀が終わった。

 山頂はガスっていて展望はないが、この日はじめて休憩らしい休憩をとることにする。 振り返ってみれば7時間近く、ほとんど休みをとらず行動していたことになる。

 装備をしまい、ハイカーとなって下山開始。 山頂から八本歯のコルの下あたりまでは、高山植物が色とりどりに咲き乱れ、心が和む。 大樺沢への急な斜面を、はしごを交えながら一気に下っていく。 途中、ガスの切れ間から、登ってきたバットレスも横目に見えてくる。 やがて、バットレス沢に到着し。これで1周したことになる。 登ってきた下部岩壁や四尾根、 さらには中央稜も見える。しばし感慨にひたる。

 二俣まで下りて、また休憩。かなり疲れてきているし、 17時の最終のバスに間に合えばいいかと思い、ゆっくりと下る。 登山口まであと20、30分ぐらいというところで、雨が降り始めた。 すぐに大粒の雨になり、お約束の激しい雷雨となった。 岩場で降られなくてよかったとか、あと30分早く下りていたら濡れずに済んだとかと、 しょうもないことをあれこれ考えながら歩く。 登山道も沢のように水が流れ、すべりやすいので慎重に下る。 結局、雨具を着ていても、全身びしょ濡れ状態。最後の下りにかかると、 ようやく広河原ロッジの赤い屋根が見えてくる。 ロッジを通り過ぎ、再び野呂川に架かる橋を渡り、バス停に到着し、全行程が終了した。

 帰りも乗り合いタクシーにする。乗る頃には小雨になっていた。 タクシーに揺られ、ウトウトしているうちに駐車場に到着。 この頃には雨もやんでいた。濡れて寒かったので、すぐに芦安の温泉に入り、スッキリしたところで横浜への帰路についた。

 北岳バットレスは、アルパインを志す者に対して素晴らしいフィールドを提供してくれる。 とくに第四尾根は、技術的な難しさはなく、天候等の条件がよければ、 快適な登攀が楽しめるルートである。 また、標高の高いところでの登攀は、展望もよく格別である。

 今回、ザイルを組んだMNさんは、まだそんなにアルパインの経験はないものの、 リードでも終始安定した登りをみせ、ランナーの取り方、ピッチの切り方、 ザイルワークともに全く問題なかった。なによりも度胸がある。 もう少し荷があるときの登攀に慣れてくれば、もっと難しいルートでも入れるだろう。

 北岳バットレスは私にとって3度目の挑戦であったが、いろんなことがあり、 実に思い出深いものになった。
(UK記)



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