谷川岳・幽ノ沢左俣中央ルンゼ

2010年7月4日


1ピッチ目の小ハングを越える

 5時前に一ノ倉駐車場にて起床。昨夜はかなりしっかりとした雨が降り続いていた。 しかし、テントから顔を出すと細かい雨がぱらつく程度で所々青空が見える。 のんびり準備をして、とりあえず今後の為に行けるところまでと出発。 静かな林道を歩いて行くとすぐに幽ノ沢に出合う。

 狭い入り口から沢に沿って進んで行くと冷たいモヤが出てきて、不安定な雪渓となる。 少し戻って左岸に渡り、展望台への急な斜面を濡れながら藪こぎしていくが、かなり疲れる。 展望台に出ても木々で視界はなく、少し反対側に降りたところからハーネスを着けて15m懸垂で二俣に降りる。 ここで視界が開けて幽ノ沢全体を初めて見ることが出来、左俣の先には滝沢大滝や目指す大ハングもしっかり見える。 天気も回復してきているので先に進み、雪渓を少し歩いて中尾根末端に取り付き、またまた藪こぎ。 左俣を進んで行くとだんだん視界が開けてきて、草付きが多いスラブの先に中央ルンゼが見えてくる。 さらに少し進むと斜面が急になってきたので、クライミングシューズに履き替え、すぐに小ハング下に着く。 天気も持ちそうなので、ここからロープを着けて登攀開始。大ハング下までリードすることになる。 (ルート全景

1ピッチ目(W?,A0 30m)
 すぐの垂壁に取り付くが結構厳しい。中央辺りは乾いているが少しかぶっている。 濡れている左側にトラバースし、足を細かく上げ、ちょうどいい場所に生えている枝を掴みながらA0で乗越す。 そのまま上がって行くが支点などなく、縦に走った岩溝に長短2本のハーケンで支点とするが、短い方はあまり利いていない。 長いハーケンはしっかり利いたようで、ハンマーで打ち込むたびに変化していく金属音が心地よい。 後続が来て次のピッチ。

3ピッチ目(V 40m)
 左の緩いルンゼには入らずに右側から巻くように上がる。スラブを上がって行くがピンなんてひとつもないため緊張。 もろい岩がないか叩きながらゆっくり上がっていく。 しばらく進んで行くと大きな岩に錆びてボロボロのリングボルト。足元には錆付いたリベットハンガー。 リングボルトを支点として、右上には気休め程度に緑色のカムでバックアップをとり、後続を迎える。 次のピッチで大ハング下に行けそうだ。

4ピッチ目(V+ 40m)
 左側の緩いルンゼに入り、途中で右側にハーケンを打ち、大ハング下スラブの真ん中辺りを上がって行く。 いい感じの岩があるが、手をかけるとグラグラして今にも剥がれそうだ。 ドキドキしながらなんとか騙し騙し上がるが、その上も傾斜が出てきて細かくなり、気合いが入る。 ようやく抜けてハング下に来て周りを見回すが、期待していた支点はひとつも見当たらない。 狭いレッジに着くがハーケンを打てる岩溝もなく草付きを掘り、なんとかハーケンを2本打ち込むが1本は半分しか入らない。 この狭いレッジでは神経が消耗する。後続はすんなり来て、リードをYYさんに交替。

5ピッチ目(V+ 40m)
 YYさんはスムーズに雨水が滴る大ハング下を右上にトラバースし、 突き当りで右のカンテに一段上がってそこから下のテラスまでクライムダウン。 階段状だが岩は所々濡れてきて、クライムダウンには緊張する。

6ピッチ目(W+,A1 40m)
 リードをKTさんに交替して核心のピッチ。天候も霧雨となり、上のルンゼは下から見ても濡れている。 少し上がってフェースの左側をアブミで上がる。3回程度の掛け替え後、右にアブミでトラバース。 そこからさらにフリーで右のルンゼに入るのだが、ルンゼ内は水が流れている状態で下から見ても厳しい感じ。 ルンゼ内も濡れて厳しいらしく、そのひとつ上もアブミをかけて少し上で切る。 セカンドで続くが見た目以上に緊張する。ルンゼへ移ってアブミを使ってやっとの思いで抜ける。 レッジは3人ではかなり狭いが、根元までしっかり打ち込まれたキレイなリングボルトが一本あって安心。 ハンギングにしてぶら下がるが足元は何メートル下まで切れているかわからない。

7ピッチ目(V 40m)
 ロープをきちんと整理して狭いレッジからKTさんトップでスタート。 左側から上がって草付きの多いスラブをそのまま右上して行くが岩は水浸し。 ラストで後続するが岩は濡れて簡単に上がっては行けない。さらに行くとまたまた激しい藪こぎ。

8ピッチ目( 30m)  YYさんと2人で藪こぎしながら上がると大きな岩があり、この先はダメだと先行していたYYさんが降りてくる。 モヤで視界もあまりなくルートも不明瞭なのでとりあえず一旦ここで切ることに。 KTさんが合流しルートを確認。地形図とコンパスでも確認する。

9ピッチ目( 40m)
 傾斜は急で視界もあまりないため、確保しながらKTさんリード。 ラストでまたまた急な斜面を藪こぎしながら後続すると開けた終了点。 ここでやっと藪こぎから解放され、ロープを外す。

 モヤであまり周囲は見えないが、前の斜面にはきれいにバンドが走っているのがわかる。 左側の広い岩場に進み、そのまま右側にバンドをトラバースし、回り込んだ尾根を上がって行く。 所々うっすらと踏みあとが出てきて、濡れた岩と草の斜面を上がって行くとシャクナゲが咲く堅炭尾根に出る。 登攀具を整理し急な道を下って行くと下には雪渓が見えてきて、芝倉沢に出る。 雪渓は安定しており、軽アイゼンをつけて快適に下るとコンクリートの道が見えてくる。 林道で休憩をして、行きとはちょっと違って見える幽ノ沢を過ぎ、誰もいない一ノ倉駐車場に着く。
(MD)

7月4日(日) 晴れのち小雨
一ノ倉駐車場(5:30)〜幽ノ沢出合(5:40)〜二俣(6:45)〜小ハング下(8:30) 〜5ピッチ目テラス(11:30)〜終了点(14:30)〜堅炭尾根(15:20) 〜芝倉沢出合(17:00)〜一ノ倉駐車場(18:00)

感想
 谷川のルートは去年の一ノ倉南稜に続いて2度目、幽ノ沢は初めてとなった。 静かな幽ノ沢貸切の中、KTさんの突破力、YYさんの経験に守られての登攀となった。
(MD)

 幽ノ沢初挑戦でした。 すっきりした判りやすいルートでしたが、支点が無く退却できないルートで 下降路の心配をしながら時間を気にして登るのはやはりプレッシャーがかかりました。 パーティに恵まれて無事に楽しむことができました。
(YY)


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