2012/5/5-6 白馬主稜

GW後半は寒気を伴う気圧の谷の通過で山は荒れ、多くの遭難が発生した。我々も直前まで情報を集め、当初の予定を大きく変更しての入山となった。

■メンバー: A木会長(CL)、K緑(SL)、Y本、Y野、H浦

■当初の計画:5/3 猿倉~主稜~四峰(2500m)付近, 5/4 四峰~白馬岳頂上~杓子岳~白馬鑓~天狗山荘,  5/5 天狗山荘~不帰~唐松岳~八方尾根~兎平-ゴンドラ-八方-横浜,  5/6 予備日

■実際の山行:5/3 猿倉~主稜~白馬岳頂上~白馬山荘, 5/4 白馬山荘~大雪渓~猿倉

 ◇5/3  5:30猿倉→6:40白馬尻7:20→9:50八峰直下10:10→12:40四峰→13:30三峰直下→15:10三峰→16:40山頂

◇5/4  6:00白馬山荘→7:20白馬尻→8:10猿倉

前夜は駅泊し5時過ぎに小雨の猿倉に着いた。山荘前はもとより臨時駐車場もほぼ満車状態で、そこから見える主稜は7峰辺りまで見えるがその先はガスの中だ。空模様を見ながら時間調整をし白馬尻へと向かうと、5張程度のテントがあった。昨夜のココは大雨だったらしく、疲れた様子で早々に下山してくるパーティーもいる。 

パックリと大きく口を開いたシュルンドを、右にトラバースしてやり過ごす。連日多くのパーティーを迎えてるだけあって、トレースは明確だがその分既に緩み気味だ。時折雲の隙間からギラギラと太陽が顔を出し日差しが暑い。20人位の団子状態で雪の状態を見ながら高度を上げてゆく。

八峰直下のブッシュに着き腰を下ろすと、Y本が「カメラが無い(涙)」と。ザックに付けたケースの口が開き中身は途中で落ちたらしい。残念っ。

ココから先がいよいよ主稜の始まり。のんびり組の我々は最後に出発する事とする。雪は少な目で下部は木登りも多い。三峰まではどこがどごだか明瞭ではなく、ただただ登るという感じ。急傾斜を上がった六峰辺り(多分)辺りから、A木がY野をタイトロープする。アイゼンに雪団子が付き始めてきた。

その先の草付き岩場は右側から巻き込むように一手上がると、上はやはりハイマツの木登りだ。 ひとしきり高度を上げたところで後ろを振り向くと、眼下にはウネウネした足跡が連なっているのが見下ろせる。そこに風に流され移動する雲の影が映り、しばしのショ―タイムを楽しむ。背後の戸隠連峰と青空と白い雲のコントラストも美しい。対象的に白馬本峰には次から次へと雲が覆いかぶさってくる。

今朝のラジオで言っていた6人パーティーの捜索なのだろうか、ヘリがずっと小蓮華山の辺りを飛んでいる(全員亡くなった事を後に知った)。状況を見て小蓮華尾根から降りようと考えていたが、土が出ていて雪が無いためこの時点で下山ルートは大雪渓に変更となった。

三峰への登りでしばし渋滞待ちとなり、今回初のロープの出番となる。この場所からは山頂直下60m雪壁に張り付く小さな隊列までもが見える。K緑リードで右側面からグスグスの雪壁に取りつき、上部を巻き込むように稜線に出る。続いてA木・Y野・H浦がユマール、ラストにY本の順。50mロープでは若干足りず、幕営跡のあるなだらかな三峰頭の少し下でのビレイとなった。

小山を正面から上がって二峰。ここにも少し広めのしっかりとした整地跡がある。一段上がって本峰へと繋がる最後の雪壁にとりかかる。雪屁に向かって右端に切り崩しがあり、右上するようにトレースが付いている。Y野のコンテで使っていた短めのロープを継ぎ足して、小さな岩場から再びK緑のリード。ルンゼ状の足場はもはやグスグスでガスと風も出始めた。

全員が上がりきる頃には山頂からの展望はゼロ。握手を交わして山頂の碑はチラ見で済ませ、白馬山荘目掛けてまっしぐらに降りた。山荘で天場を聞くと、山荘の近くに張ってもいいとの返事。しかしやはりそこは風の通り道。今夜も暴風警報とおまけに雷注意報が出ている。せっかくテントを担いではきたけれど安全第一。少々のとまどいの後、素泊まりに決定した。

口ぐちに「山荘泊まりは何年ぶりだろう」「たまにはこういうのもいっか」と。温かなお茶の用意や乾燥室に感激しつつ、快適な一夜を過ごす。談話室のテレビからは、小蓮華山近くで見つかった6人のニュースが大きく流れている。他にも幾つか遭難があったようだ。会員が心配しているといけないので、無事であることをメールで伝えた。

翌朝のドカンドカンと鳴り響く雷には驚いたが、一瞬の晴れ間を掴んで大雪渓から尻セード混じりで一気に下山した。

他会を交えず久々に人数の集まる山行となり、それだけで楽しかった。また数年ぶりとなる会長との山行に、安心感もあったお陰で精神的には余裕を持って楽しむ事が出来た。主稜そのものの難しさよりも、行きも帰りも出発のタイミングを掴む判断力が核心のような山行だった。