2011/10/8-9 明神東稜~主稜

メンバー:Y田・K野・H浦・他1

9月の谷川が不調で肩を落としていると、旧会員の他1から「連休の2日間で北アに行かないか?」と誘いがあった。沈んだ気分は一気に吹き飛び、すぐさま食い付いた。相変わらず単純。
候補は滝谷ドーム中央稜と明神東稜~主稜。積雪期の可能性を探りたく明神に決定した。結果は連休の混雑とは無縁な静かな山行となり、明神にして大正解だった。
メンバーの選定を一任してもらい、例会でやはり夏山が不調気味だったK野に声をかけたところ、即答で行きたいとの事。隣で話しを聞いていたY田も同じく明神に興味有りとのことで、その場でメンバーが決まった。他1とK野は面識がないため、ルートの勉強会と顔合わせを兼ねて事前に集まり、アルコールで親交を深めてからの山行となった。

【1日目】
06:10上高地-06:50明神館-09:30瓢箪池-10:30第一階段-12:40ラクダのコル-14:10バットレス上-15:30明神岳主峰

足湯のある沢渡の駐車場で仮眠をし5時前に起きると、入りきらない車が既にPの外にも列を作っている。道の駅泊にしなくて良かったぁ。喧騒の上高地で登山届けを出し、2日間の水を汲んで出発だ。水を担ぎ上げるのは久しぶり。
明神館前も沢山の人人人。それでも明神橋に向かう人影はなく、橋を渡ると途端に静寂の別世界となった。林道を右に行き、50m程で左の脇道に入る。通行止の工事用バーをすり抜けて信州大の赤い小屋に向う。小川にかかった橋には、今年建てたのであろうベニヤ板に「←ひょうたん池」の小さな看板。その後も要所要所でこの看板やテープと赤丸が続いた。夏に草を刈ってくれたのだろうか、懸念していた藪こぎはなく踏み跡もしっかりとあり瓢箪池まで迷うことはなかった。
見晴らしの良い宮川のコルにで一本立てていると、ひょうたん池までのピストンという単独男性が上がってきた。この日会ったのはこの方のみ。ひょうたん池のコルに向かい上宮川をトラバースすると、誘導されるかのようにⅣ峰東稜末端のレリーフにぶつかった。周囲には見事なナナカマドが、赤々とした秋の実りを付けている。

広々とした瓢箪池でハーネスを着けて、いよいよ東稜の始まり。まずは目の前の草つき急登の第一階段だ。グラグラな潅木を支点にしたフィックスロープを無視して一登りし、プチ岩稜とハイマツ帯で高度を稼ぐととラクダのコルに出た。
目の前には本日のメインイベント、バットレスが拡がる。オブザベーションをしてから、3メートル程の岩を一段上がって50mのシングルロープを結ぶ。
打ち合わせ通りに“H浦リード-K野(ユマール)-他1(ユマール)-Y田”の順だ。美味しいとこ戴いちゃってスミマセン(#^.^#)

1P目 45m Ⅱ級
草つきのバンドを左に10m程トラバースし、浅いルンゼに入る。第一階段同様に草は枯れていたので特に問題は無い。
ロープを一杯に出し、より大きな岩を選んでスリングを掛けて支点とする。時間短縮の為に、ラストのY田は肩絡みで確保。そのままロープを引きずってもらい、歩いて核心部取り付きへ。

2P目 20m Ⅲ+~Ⅳ-級
下部の緩やかなクラックには、これでもか位にハーケンが縦一列に並んでいる。中間支点を長いスリングで取って、一歩右に出てから上部の凹角に取りかかる。
下部と違って支点が少ないので、0.75のキャメを使う。残置のお助け紐がぶら下がっている辺りが核心で足が無い。凹角のクラックは爪先しか入らないし、右手は無いし(実は左のガバを取ってヨイショと上がれば簡単らしい)。せっかくなのでもう少しあがけば良かったが、一歩右のフェースに逃げてしまった。後で後悔。ま、積雪期のイメトレが出来たってことで良しとしよう。
上がりきった終了点には、横一列にハーケンが6本。緩いのや錆びたのを避けて後続を迎える。

あとは主峰直下の巨岩群を上がるだけなのでロープをしまう。 踏み跡を辿って右上気味に主峰直下へ向い、突き当たった所で多くは左上し巻き込むように山頂へ出るのだが、我々は直登を選ぶべく突き当たりを右側の暗いルンゼに入った。
そしたらアラ大変。不安定なガレが上まで続き、いつ足元が総崩れするか分からない。止む無くガレの途中で上下に注意を払いながら再びロープの出番。20m x 2P

1P目は他1が足元に注意しながらトップで行く。
2P目は再び私。難しさはないものの、手足の置き場に気を遣う。最後は堆積したガレがあり、慎重に体重移動して抜けると細長い山頂に出た。
トップで抜けるってなんて気持ちいいんだろう。行かせてくれた皆に感謝。

後続も満面笑みで上がって来た。4人揃ったところでガッチリ握手。この瞬間が好き。
目の前に広がる穂高の山並み、表銀座の山々、白山や富士山、下界の上高地、知ってる限りの景色が全部見渡せる感じだ。
ロープを仕舞い、しばし撮影会をする。まずまずのペースで来れて良かった。山頂から翌日登るⅡ峰をじっくり観察して、幕営予定のⅠ~Ⅱ峰のコルへと急なガレを降りる。
しかし、コルに降りてみるとそこは2天ほどのスペースもなく、上から石が降ってきそうな所だった。選択肢はないので、主峰に戻って張ることにした。それでも4天張るのはギリギリの広さだ。
幸いさほどの風もなく、喧騒とは無縁な場所で快適な一夜を過ごす事が出来た。夜中にトイレに起きたY田が、月の美しさに感動したらしく遠吠えをしていた。

【2日目】
7:10明神岳主峰-7:20コル-8:30Ⅱ峰-9:00Ⅲ峰-9:25四峰-10:00Ⅴ峰-13:00岳沢7番標識-13:50上高地

5時起床。お湯が沸く頃には、空が朱に染まり始めた。貸しきりの展望台から、コーヒー片手にご来光をたっぷりと楽しむ。こんな贅沢めったに味わえない。
本日のメインはⅡ峰の登りだ。斜めに傾いたようなⅡ峰は一見すると手強そうに見えるが、弱点は左の凹角にありそうだ。フェースにはコブの付いたフィックスロープが長々と垂れている。逆ルートの場合は通常は懸垂だし、これで登り降りする人がいるのだろうか??今日は“他1-K野-H浦-Y田”の順。

Ⅱ峰
1P目 20m Ⅲ級
取付き左側面に真新しいピンが打ってあり、その右手をハイステップで一段上がる所から始まる。
階段状を10m上がってからザレを左にトラバースし、凹角を左から回りこむと古いボルトがある。

 

 

2P目 20m Ⅲ級
凹角左手の快適なフェースから右上するとⅡ峰の肩に出る。
Y田さんはというと、最後の一登りをあえてカンテに取りついてる。さすが、やんちゃなおじ様は違う。

 肩にザックをデポして斜面を20m上がれば、懸垂下降地点のあるⅡ峰ピークだ。これから向かうⅢ~Ⅴ峰と大正池一体がよく見渡せる。しばし見学していると、Ⅲ峰をトラバース気味に上がってくる4人パーティーが目に入った。昨日の瓢箪池以来の人だ。話しをすると、南西尾根から前穂に向かうらしい。その後も同ルートを行く4人パーティーに会った。

Ⅲ峰は岳沢側の巻きから始まり、途中で岩場を上がって稜線に出ると小さな岩山がある。早速他1が駆け上がり“いかにも”という山屋御馴染みポーズでK野と撮影会をしていた。
岩場を降りて、なだらかなⅣ峰へと向かう。後ろを振り返るとⅠ~Ⅲ峰の見事な岩峰が聳え立っている。最後は綺麗なピラミダルⅤ峰の肩へ巻き気味に出て、再びザックをデポして頂上へ。
あとは一気にⅤ峰台地へとガレを降りる。調子よく降りていたら少し岳沢に寄り過ぎてしまい、ハイマツを藪こぎをして軌道修正する。広い斜面なのでガスった時は要注意かもしれない。
広々としたキャンプ地のような台地でしばし寛ぎ、左手に2263mピークを見送って樹林帯の南西尾根に入る。

途中左に走る支尾根に注意し、木の根の出た痩せ尾根を下降する。所々でトラロープが張られ、両側が切れてるが無雪期は問題なし。
そろそろ腿が疲れ飽き飽きしてきた頃に、岳沢の7番看板と人々が目に入り登山道へとぶつかった。
迷い込み防止のロープをまたいでゴール!互いの労をねぎらい、再びガッチリ握手。

2日間の快適な山行の思いを胸に、お洒落な山ボーイと山ガール達で溢れる上高地へとゆっくりと向かった。(記録:H浦)

◇感想◇—————————————————————-
穂高の山々に見守られ眠り、そして目を覚ます。最高の贅沢っ!!
雲ひとつない晴天の下、まだまだ未熟な自分ではあるが、諸先輩方に見守られ、ご指導を頂きながら山行を無事に終えることができた。多くの登山者で賑わいを見せているご近所の穂高の山々とは違い、ここでは先行パーティも後続パーティもおらず、静かな山行を存分に満喫することができた。休日を街やリゾート地で過ごしていては得られない感動と興奮をパーティの皆と分かち合えたことを大変嬉しく思います。ありがとうございました!(K野 記)
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